裁決事例の紹介

ここでは、実務に役立ちそうな国税不服審判所の裁決事例を紹介しています。

相続税の重加算税取消(配偶者の税額軽減)

相続人である配偶者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたとは認められず、相続税法第19条の2第5項に規定する隠ぺい仮装行為はなかったとした事例
平成24年4月24日裁決

原処分庁は、被相続人の配偶者である請求人が、被相続人の財産を原資とする多額の請求人名義の有価証券等が存在し、それが相続財産であることを熟知しながら、関与税理士にそれを伝えず、同税理士に過少な申告額を記載した申告書を作成させ提出していることから、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたといえ、当該請求人の行為は相続税法第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》第5項に規定する隠ぺい仮装行為に当たる旨主張する。
しかしながら、相続税法第19条の2第5項が、適正な申告を確保し、課税の公平を図るため、納税義務者が過少申告をするについて隠ぺい仮装行為による事実に基づく金額までもが配偶者の税額軽減措置の適用を受けるのは不合理であるとの趣旨から設けられたものであることからすれば、相続又は遺贈により財産を取得した者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、その意図に基づく過少申告をした場合には、同項の適用要件が満たされるものと解される。
本件の場合、請求人において、請求人名義の有価証券等が明らかに被相続人に帰属する相続財産であると認識していたとまで認めるに足りる証拠はない上、請求人は、関与税理士から相続人名義に係る残高証明書等の資料の提出依頼を受けておらず、また、調査時において調査担当職員に対し、請求人名義の有価証券等に関する資料の一部を自主的に提出していることからすれば、相続財産を過少に申告するという確定的な意図を有していたと認めることはできない。
したがって、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたということはできず、相続税法第19条の2第5項に規定する隠ぺい仮装行為があったとは認められない。

裁決書(抄)本文は以下から見ることができます。
⇒裁決書(抄)

役員給与の減額改定は業績悪化改定事由に該当しないとされた事例

役員給与の減額理由が業績悪化改定事由に該当しないから減額後の定期給与の額を超える部分は定期同額給与とはいえず損金の額に算入することができないとした事例(平19.8.1~平20.7.31の事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
平成23年1月25日裁決

役員給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与及び利益連動給与のいずれにも該当しないものの額は、損金の額に算入されないこととされている。このうち、定期同額給与とは、各支給時期における支給額が同額である定期給与のほか、支給額の改定があった場合において一定の要件を満たす定期給与をいう。
この事例は、請求人における役員給与の減額改定につき、業績悪化改定事由の存否を判断したものである。

請求人は、決算月(平成20年7月)の2か月前において、経常利益が対前年比で6%減少している状況から、代表取締役の給与を減額改定したことは、法人税法施行令第69条《定期同額給与の範囲等》第1項第1号ハに規定する役員給与の減額に係る業績悪化改定事由に該当する旨主張する。
しかしながら、法人税法施行令第69条第1項第1号ハに規定する業績悪化改定事由とは、法人の経営状況の著しい悪化その他これに類する理由によりやむを得ず役員給与の額を減額せざるを得ない事情があることをいうのであり、本件は、本件事業年度の売上高、経常利益は過去の業績と比べて何らそん色がないこと、請求人が設定した業務目標を達成できなかったことが減額の理由であること等からすれば、業績悪化改定事由があるとは認められず、また、上記理由以外に役員給与を減額せざるを得ない特段の事情が生じていたと認めるに足る事実はない。

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相続開始前3年以内の贈与財産を相続税の課税価格に加算しても贈与税の申告は必要です。

相続開始前3年以内に贈与があった場合の当該贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算したとしても、贈与税の課税関係が消滅するものではないとした事例(平成5年分贈与税に係る決定処分等/棄却)
平成10年3月11日裁決(裁決事例集 No.55)

納税者は、相続開始前3年以内の贈与財産を相続税の課税価格に加算しているから、贈与税の課税対象とはならないと判断し、贈与税の申告はしなかった。それに対し、税務署は贈与税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分をした。納税者は、相続税法19条の規定により相続税の課税価格とみなして相続税の課税価格に加算しているから、贈与税の課税対象とはならない旨主張したが、国税不服審判所は、同条の規定の趣旨は、相続税法が採用している相続税の累進税率の適用による税負担が、財産を生前贈与することによって軽減されて公平を欠く結果となることを考慮し、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を相続税額の計算上、相続財産の価額に加算することにより所要の調整をすることにあると解されるところ、同条1項の規定により相続税の課税価格とみなされた贈与財産については、贈与税が課税されることが前提とされたものであって、贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算したからといって贈与税の課税関係が消滅するものではないとしました。

相続税の計算をしている段階で3年以内贈与財産があることがわかったが、贈与税の申告がされていなかった場合に、どうせ相続税で加算して精算されるのだから、贈与税の申告は省略しておこうと考えるのは危険です。
税額はどちらにしても精算されるので損得はないようですが、本来贈与税の申告義務があるのに申告しなかったということで、無申告加算税が課されることになり不利益を受けることになります。

裁決要旨は以下から見ることができます。
⇒裁決要旨

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事前確定届出給与に関する初の裁決事例

事前確定届出給与に該当せず、損金の額に算入することはできないとした事例(裁決事例集 No.79)

平18.4.1~平20.3.31の各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却

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請求人が営んでいた税理士事務所を他の税理士に承継するに際して受領した金員に係る所得は、譲渡所得には該当しないとした事例

譲渡所得と認めなかった事例(裁決事例集 No.79)

請求人が営んでいた税理士事務所を他の税理士に承継するに際して受領した金員に係る所得は、譲渡所得には該当しないとした事例(平成19年分の所得税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却)

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